家族が気が付いた頃にはたいてい初期ではない
残念ながら、認知症を初期やMCI(軽度認知障害)という認知症の前段階で見つけて、すぐ受診するというのは結構難しいんです。うちの婆ちゃんも確信して病院に連れて行った頃にはもう中等度のアルツハイマー型認知症でした。家族も自分のことでも何かと忙しいし、すでに診てもらっている内科や整形外科などに連れていくだけで手いっぱいだったりしますので、わざわざ精神科や認知症外来に連れて行くというアクションは本人が高齢であればあるほど遅れがちだと思います。
今までと何だか違うを気にしてみる
早くMCIや認知症に気づけるのは若年性認知症の場合が多いんです。なぜかというと仕事をしているからということと、歳だからそんなものよというフィルターがかからないからです。仕事をしているとどうしても、大事な予定が入り、すっぽかしてしまうと大事になってしまいます。だから、わかりやすいんです。それに、「あの人しっかりしていたのにどうしちゃったのだろう?」と周りもなりますし、本人もあれ、何でこんな大事な予定を覚えておけなかったんだろうと自分でも不思議に思うわけです。それに対し、金銭労働から引退している高齢者の場合は、予定も老人会だったり、趣味活動だったり、予定通りに行動できなくても問題にならないような予定が多いため、本人も周りも気付きにくいんです。老人会に行かなくて、とがめられることもないし、忘れていても、「忙しかったのかな?」「今度はよかったら来てね」という感じになりますし、本人も「うっかりしていたな」というくらいで終わってしまいます。だから、高齢者の場合は気付くのが遅れるんですよね。
すっぽかしに注意
軽度認知障害や認知症の初期でわかりやすいのは、やはり、約束のすっぽかしです。うちの祖母も認知症に気づくかなり前に、予約の入っていない日に内科受診に行ったことがあったそうです。それも、認知症を確信し、内科医に精神科への紹介状を書いてもらうときにわかりました。「その時点で教えてくれればよかったのに」とその時は思いました。すっぽかし以外にはやはり、「探し物」「置忘れ」が多くなってきます。これも、認知症じゃない人でもあることなので、気にしないと気付けないんですね。その探し物や置忘れの程度もだんだんと高くなってきますが、軽度認知障害や初期の段階では頻度もそこまでではないため、一緒に暮らしていないとわからなかったりして気付くのが遅れます。歳もとってくると「歳とってきたし、そんなものだろう」と家族も気にしないんですね。うちの婆やんだと「日本舞踊の扇子をずっと探してる」「大事な書類(入院)がなくなる」「洗濯屋に洗濯物を出しに行ってくると言って、出て行ったのに洗濯物が玄関に置いたまま」等がありました。もちろん、他にも書ききれないくらいいっぱいあります。
ちょっと元気がない?
趣味の活動に最近行かなくなったり、何だか寝込んでいることが多くなったり、化粧をしていたのにしなくなったり(元からしない人は関係ありません)そんなうつっぽい感じが出てきたりもします。認知症ではなく、老人性うつの場合もありますので、やはり精神科等で診てもらうのが重要になってきます。うちの婆ちゃんだったら、「踊りや三味線に行かなくなる」というのがありました。以前は、ずっと寺の催しのために、巻き寿司をたくさん作って持って行っていたのですが、「もう、しんどい、できひん」と私の母(婆ちゃんの娘)に訴えたことがありました。以前やっていたことをするのが、段取りもあやふやになり、やる気も出ないし、難しくなってきたんですね。連続ドラマを見なくなるなんかも認知症の兆候になります。連続ドラマって前の話を覚えているから面白いんですよね。前回の話を忘れちゃうと面白くなくなるので見なくなる。婆ちゃんは朝の連続ドラマを若い時からずっと見てたんですが、だんだん見なくなってしまいました。そんなことでわかることもあります。それ以外では、何だか清潔じゃなくなってきた、化粧もそうですが、身だしなみに気を使わない、お風呂に入っていない等そんなことでわかることもあります。
なんかちょっとおかしい?を大事に
人によって活動の仕方が違うし、認知症の兆候にあたるものも違ってくる部分もあります。また、認知症の種類によっても現れることが違ってきます。やはり、「なんか前とちょっと違うな~おかしいな」とちょっとでも思ったら、気のせいだと思わないことが重要です。自分の気にし過ぎかなと思うくらいの段階で精神科や物忘れ外来等に連れていかないと、認知症の初期や軽度認知障害の段階で見つけるのは難しいんです。
最近は紹介状が重視される
精神科等認知症を診てもらえる科のある総合病院等に通っていたら、うちのように内科の先生に事情を話し、精神科への紹介状を書いてもらうのがいいかと思います。最近は、紹介状にうるさくなりましたよね。昔よりしばらくかかっていないと初診料をすぐとられたり、なかなか診てもらえなかったりします。
認知症外来はどこも混んでいる
精神科や認知症外来は最近はどこも混んでいます。だから、「診てもらうぞ」と決断して、精神科の窓口に行っても、そこから何か月も先でないと診てもらえないということがよくおこります。だから、一刻も早く病院に連れていくことが重要なんです。窓口に行ってから初診までにも時間がかかり、そこからMRI等の脳の検査等をし、鑑別診断になりますから、認知症だと診断されるまでにも時間がかかるわけです。今は、根治薬の研究も進んでいますので、やはり、一刻も早く進行を遅らせるために受診することが重要かと思います。