震災の日は海外出張
東北の地震の時は、関東に住んでいました。当時は慶應義塾大学に勤めていたんですが、留学経験があるということで、海外研修に学生を連れていくという仕事を頼まれたんです。それも欧米ではなくラオス。若い時は、私は実はバックパッカーで、ラオスも一人旅したことがありましたので、お安いご用でした。またまだラオスは、発展途上国で、医療も昭和初期の日本みたいな感じなんです。助産師が常時病院にいなくて、事務職の人が赤ちゃんをとりあげちゃったりします。治安がいいので、看護学生が公衆衛生学を学ぶにはうってつけのところなんです。
日本に帰る、その時に
ラオスの病気や田舎町をまわり、いざ日本へ帰ろうというその時。空港で飛行機を待っていたら、ある学生に日本から電話がかかりました。「日本で大きい地震があった」という学生の親からの電話でした。次の瞬間にはCNNニュースは「TSUNAMI JAPAN」という表記になり、津波で家が流されるような映像が始まりました。しばらくは、ただ、同じ映像の繰り返しでした。あぁ、本当に日本で大きな地震が起こったんだと信じられない思いでした。
日本に帰ったほうがいいのか
飛行機の発着も遅れることになり、本当に今、日本に帰っていいのか、そういった判断を迫られる状況でした。東京は、混乱しているとのことでしたが、結局のところ飛行機が出ることになり、帰ることになりました。大学生なので、本来なら成田空港で別れるところでしたが、念のため、教員の家の方面ごとに別れて、可能な限り、学生とともに帰ることになりました。もう震災直後ではなかったので、そこまで混乱しているようには見えませんでした。後で東京の人たちが家までの道のりをひたすら歩いたと聞き、驚きました。生きていると何が起こるかわからないですね。亡くなった方のご冥福を祈りながら、今日も無事であることに感謝したいと思います。